更新日 2026年8月24日
子どもがテストで低い点を取ったり、勉強についていけなくなったりすると、多くの親は焦りを感じるのではないでしょうか。
「塾に通わせようか」
「補習を受けさせたほうがいいかな」
「家庭教師を頼んだほうがいいかも」
苦手を補うための方法を考えるのは、決して珍しいことではありません。
では、体育や音楽、美術といった「実技教科」が苦手なときはどうでしょうか?
「運動神経がないから仕方がない」
「絵のセンスは生まれつきだから」
「将来の受験や進路に大きく響くわけじゃないし……」
そんなふうに、「仕方がないこと」として、そのままにしていないでしょうか。
もちろん、すべての苦手を克服する必要はありません。
けれど、子どもにとって実技教科の苦手は、単に「できない」というだけではなく、学校生活の中で繰り返しつらい思いをするきっかけになることがあります。
この記事では、実技教科が苦手な子どもが感じているかもしれないつらさと、親ができるサポートについて考えていきます。
1.実技教科が苦手だと、なぜ学校生活がつらくなるの?
体育や音楽、美術などの実技教科には、勉強とは少し違った難しさがあります。
それは、「できないことが周りから見えやすい」ことです。
例えば、
- 体育: 逆上がりができた子から座って待っている授業中、できない子はずっと失敗する姿を見られ続けてしまう。
- 音楽: 一人で歌う実技テスト、声が出なかったり音程が外れたりする姿をみんなの前で披露しないといけない。
- 美術: うまくできなかった作品をみんなに見られないように隠したくても、作品が大きくて隠すことができない。
「できない」ということが、テストの点数のように自分と先生だけのものではなく、集団の中で目に見える形になりやすいのです。
みんなと同じ課題に取り組みながら、自分だけうまくできない。
できた子が先に終わって、自分だけ練習が続く。
そんな状況が何度も続けば、
「またできなかったらどうしよう」
「みんなに見られるのが嫌だ」
逃げ場のない空間で「できない自分」を突きつけられ続ける経験が何度も続くと、その授業以外の時間まで「自分はできない」という否定的な気持ちを持ち続けるようになってしまうことがあります。
だからこそ、実技教科の苦手を考えるときには、「何ができないのか」だけではなく、「その時間を子どもがどう感じているのか」にも目を向けることが大切だと思っています。
2. 「苦手だから仕方ない」と放置された子どもの孤独
わたし自身も子どもの頃、体育がとても苦手でした。
鉄棒やマット運動の授業で「できるまでやめられない」状況があり、できた子たちが座って待っている中で一人残されて練習させられた経験があります。
「早く終わってほしい」と祈るような気持ちと、無様な姿をさらしている恥ずかしさ、視線に耐える居たたまれなさは、大人になった今でも鮮明に覚えています。
当時のことを思い出すたび、今でも喉元がぎゅっと締め付けられ息苦しくなるような気持ちになり、当時のわたしを抱きしめて守ってあげたくなります。
つらかったのは、「技ができないこと」そのものだけではありません。
「このつらい気持ちを誰かわかってくれているのかな」
という孤独だったのだと思います。
大人からすれば、
「体育が苦手でも大人になれば困らないよ」
「できなくても気にしなくていいよ」
「頑張ることに意味があるんだから」
と言いたくなるかもしれません。
実際、それはその通りなのかもしれません。
でも、子どもにとっては「今、この時間がつらい」ということが問題なのです。
将来困るかどうかではなく、今日の体育の時間をどう過ごしているのか。
そこに目を向けてあげて、子どもの気持ちに寄り添ってあげてほしいと思います。
子どもは自分のつらさをうまく言語化できないことがあります。
強がって「平気だし」と言うこともあります。
まずは、「実技教科の苦手は、子どもにとって大きなストレス源になる可能性がある」ということを、親がしっかり意識していることが大切だと思っています。
3. まずは「何がつらいのか」を一緒に考えてみる
子どもが、
「体育が嫌い」
「音楽が嫌」
と言ったとしても、その理由は一つとは限りません。
たとえば、
- できないところを友達に見られるのが嫌
- 何度も練習することがつらい
- 先生にできないところを指摘されるのが嫌
- 人前で歌うことが苦手
- 友達と比べられるのが嫌
など、さまざまです。
できるようになったら解決するから練習すればいいという単純なことではありません。
子どもの状況によっては、「できないままでもいいから、もうやりたくない」と思っている場合もあります。
「じゃあ、できるように練習しよう」とすぐに解決策を考える前に、
「何が一番つらいの?」と聞いてみる。
「体育そのものが嫌なの?」
「みんなに見られるのが嫌なの?」
「できないことが恥ずかしいの?」
と一緒に整理していくと、必要なサポートも変わってきます。
ただし、子どもが話したくないときまで、無理に聞き出す必要はありません。
「話したくなったら、いつでも聞くよ」と伝えておくだけでもいいのです。
目指すのは「得意」や「好き」ではなく、「嫌じゃない」
苦手な教科を好きにする。
得意にする。
できるようにする。
もちろん、できるようになれば自信につながることもあります。
でも、無理にそれを目標にしなくてもいいのではないでしょうか。
たとえば、
「逆上がりができるようになる」
だけではなく、
「体育の時間に以前ほど緊張しなくなった」
「失敗しても、もう一度やってみようと思えた」
「体育がある日でも、学校に行くことを嫌がらなくなった」
という変化もあります。
音楽なら、
「みんなの前で歌うことへの不安が少し減った」。
美術なら、
「上手な作品と比べても、自分なりに描いてみようと思えた」。
こうした変化も、その子にとっては大切な一歩です。
「大好き」にならなくてもいい。
「得意」にならなくてもいい。
まずは「そこまで嫌じゃない」と思えるところまで。
苦手な時間が少しラクになるだけでも、学校生活全体の負担は変わってきます。
4. 実技教科が苦手な子に、親ができること
子どもの苦しみに気づいたとき、親はどのようなことができるでしょうか。
① 感情を受け止める(共感)
子どもが「体育が嫌」と言ったとき、
「そんなこと気にしなくていいよ」
「誰だって苦手なものはあるよ」
と励ましたくなるかもしれません。
でも、その前に、
「みんなの前でやるのは嫌だったよね」
「できないのに何度もやるのはつらかったね」
と、気持ちを受け止めてみる。
解決策を出す前に、「わかってもらえた」と感じられることが、安心につながることがあります。
② 結果ではなく「向き合った姿勢」を認める
苦手なことでは、努力してもすぐに結果が出ないことがあります。
だから、
「できたね!」
だけではなく、
「嫌だったけど、ちゃんと授業に参加したね」
「前より少し長く続けられたね」
「一回やってみたね」
と、その子なりの変化にも目を向けてみる。
できた・できないだけで評価されるのではなく、自分なりに取り組んだことを見てもらえていると感じられることは、次の一歩を支える力になります。
③子どもが「大丈夫」と言うなら、「あえてそっと見守る」のも大切な選択肢
もし子どもが「別に平気だし」「大丈夫だよ」と言っているなら、無理に「本当はつらいんでしょ」と探りを入れる必要はありません。
子どもが見せる「大丈夫」の裏には、いろんな気持ちが詰まっています。
- 心が限界で今は何も思い出したくないとき
- 親に心配をかけたくない、あるいは「できない自分」を認めたくなくて必死で強がっているとき
- 親が心配するほどではなく、本当に気にしていないとき
どの状態であっても、強がりのメッキを無理にはがそうとせず、「そっか、大丈夫なんだね!」とその言葉を一度丸ごと尊重してあげたいと思います。
そのうえで、「知らんふりをしているわけじゃないからね。困ったときはいつでも話を聞くよ」という安心感(手札)だけを優しく渡しておき、あとは過剰に干渉せずに見守る。
「自分の言葉を信じてもらえている」
「つらい気持ちに寄り添って、今はそっとしておいてくれている」
「でも、いつでも受け止めてくれる存在がいる」
この安心感があることで、子どもは自分のペースで学校でのつらさと向き合っていくことができるのではないでしょうか。
5.「できるようになりたい」なら、環境を変えて練習する方法も
もし子ども自身が、
「本当はできるようになりたい」
と思っているのであれば、学校とは違う環境で練習する方法もあります。
勉強なら塾や家庭教師を利用するように、実技教科にも教えてもらえる場があります。
たとえば、
- 体育 → 運動教室、体育家庭教師
- 音楽 → 歌唱や楽器のレッスン
- 美術 → 美術教室、絵画・造形指導
などです。
学校では「できないところをみんなに見られる」ことが負担になっている子もいます。
そういう場合には、個別や少人数など、比較や人目を気にせず取り組める環境が合うことがあります。
一方で、マンツーマンが苦手な子もいます。
「大好きな友達と一緒なら頑張れる」という子なら、友達と一緒に取り組める環境のほうが安心できるかもしれません。
だからこそ、
「苦手だから個別指導」ではなく、「この子はどんな環境なら安心して取り組める?」
という視点で選ぶことが大切です。
そして、子ども自身が「今は練習したくない」と思っているなら、無理に始める必要もありません。
まとめ:勉強だけでなく「実技教科で頑張る子どもの心」にも目を向けよう
学校生活でのつらさは、テストの点数や成績表といった「数字で見えるもの」だけではありません。
むしろ、日々の授業で周囲と比べられ、恥ずかしい思いを重ねる「数字に見えないプレッシャー」こそが、子どもの心をすり減らす場合があります。
にもかかわらず、子どもの学習やテストの遅れには敏感になれても、体育や音楽、美術といった実技教科のつらさは、大人からは見えにくく「そのうち慣れる」「仕方がない」で見過ごされてしまいがちかもしれません。
体育や音楽、美術などの実技教科は、できないことが周囲から見えやすいからこそ、「苦手そのもの」だけではなく、「その苦手によって学校でつらい時間を過ごしていないか」に目を向けることが大切です。
「どうしてできないの?」
「もっと頑張れば?」
と考える前に、
「何がつらいのかな?」
「どうしたら少しラクになるかな?」
「この子には、どんな環境が合うかな?」
と、一緒に考えてみる。
苦手をなくすことができなくても、学校生活の中の「つらい時間」を減らすことはできるかもしれません。
「実技教科が苦手なんだな」と気づいたら、どうか「仕方ない」で済ませず、その子がどんな気持ちで学校生活を送っているのかに目を向けてみてください。
親が自分の気持ちに寄り添ってくれると思えるだけで、子どもは大きな安心感を得て、毎日の学校生活を乗り越えていくことができるのではないでしょうか。
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この記事を読んでくださり、ありがとうございます。
思春期の子どもを持つ50代母です。
かつて仕事で子育てセミナーを企画運営する中で、専門家の知見や多くの親の悩みに触れてきました。
自身の経験とプロの視点を踏まえ、親の心のゆとりと、子どもの主体性を尊重する姿勢が大切だと確信。
このブログでは、ずぼらな面もあるわたしが、無理せずラクに心地よく暮らすヒント、完璧じゃなくてもいい工夫を発信することで、あなたの子育てを優しく”ととのえる”お手伝いをしたいと考えています。