家庭教育って「宿題をちゃんとさせること」?—小学生の保護者が知っておきたい、教育基本法が示す本当の親の役割

「うちの子、全然勉強しなくて…」「毎日、宿題でバトルです」

こんな悩みを抱える小学生の保護者の方は少なくありません。

平成18年の教育基本法改正で家庭教育の重要性がうたわれるようになってから、いろいろなメディアで家庭教育の大切さが取りざたされるようになり、でも、ちょっと待ってください。教育法が本当に伝えたかった家庭教育とは、実は「毎日宿題を完璧にやらせること」ではありません。

教育基本法が語る「家庭教育」の本当の意味とは?

教育基本法第十条の条文を読み解く

まず、教育基本法第十条の条文を読み解いてみましょう。

(家庭教育)

  • 第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
  • 2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
教育基本法第十条抜粋(教育基本法全文リンク→ECOV法令検索[デジタル庁運営サイト])

どこが改正されたか興味がある人はこちらをお読みください。→文部科学省発行「改正前後の教育基本法の比較」

この条文に「勉強」という言葉は出てきません。代わりに書かれているのは、「生活習慣」と「自立心の育成」です。

たしかに、勉強習慣も生活習慣の一部です。しかし、法律が求めるのは、「親がやらせる勉強習慣」ではありません。子どもが主体的に学びに向かう姿勢、つまり「自立心」を育むことこそが、最も大切な「勉強習慣」なのです。

メディアが「家庭教育の重要性」を強調するあまり、
「子どもが勉強しないのは親のせい」というプレッシャーを親が抱えやすくなりました。

しかし、法律が本当に求めているのは 「勉強をさせること」ではなく「子どもが健やかに育つための土台づくり」 なのです。

「宿題やりなさい!」が逆効果な理由

「子どものため」と思ってかけた「宿題やりなさい!」という言葉。実はこの言葉が、親子関係に負のループを生み出します。

  • 「やらされ感」で意欲が低下
    • 「怒られるから仕方なくやる」という気持ちになり、自ら学ぶ楽しさが失われます。
  • 親がイライラ
    • 毎日同じことを言い続けるうちに、親の不安やイライラがつのり、心身に大きな負担がかかります。
  • 家庭が安心できない場所に
    • 親のイライラは子どもに伝わり、家がリラックスできない場所になってしまいます。心が不安定になると、ますます勉強に集中できなくなります。

この悪循環が続くと、宿題は親子関係を悪化させる原因となってしまうのです。

本当の家庭教育で大切にすべき2つの視点

1.親が「コントロール」を手放すことで育つ「自立心」

自立心を育むとは、親が完璧な道筋を用意することではありません。大切なのは、子どもの能力を信じて任せるという意識です。

「失敗させない」から「失敗から学ばせる」へ

子どもは失敗から多くのことを学びます。宿題を忘れたり、間違えたりした時に、「なぜそうなったのか」を一緒に考え、「どうすれば次うまくいくか」を子ども自身にゆだねることが、責任感や工夫する力を育みます。

「正しい答えに導く」から「自分で答えを探させる」へ

「どうしてそう思ったの?」と問いかける前に、まずは「〇〇だったんだね」と子どもの気持ちを受け止めることから始めましょう。そして、「どうしてそう思ったのか聞かせてくれる?」と、子どもの内面を理解しようとする対話を心がけましょう。

子どもが自らの意思で選び、行動し、責任を持つこと。これこそが、内発的な動機に基づいた自立心へとつながります。親がコントロールを手放し、子どもを信頼して見守る姿勢が、本当の意味での自立を支えるのです。

2.家庭は「安全・安心できる基地」であってほしい

そして、もう一つ大切なのが「心身の調和のとれた発達」です。

家庭が、もし「宿題は終わったの?」という言葉ばかりが飛び交う場所だったら、子どもは心に緊張を抱えてしまいます。子どもにとって、家庭は安全・安心な「基地」でなければなりません。

もし宿題が進まなくても「大丈夫、今日はもう休もうか」と寄り添える心の余裕を持つこと。それが子どもの心を健やかに育みます。

まとめ:宿題より大切なのは「親子の安心と信頼」

教育基本法が求めているのは「宿題を完璧にやらせること」ではありません。
生活習慣を整え、自立心を育み、家庭を安心できる場所にすること

親が子どもを信じて見守ることこそが、家庭教育の本当の意味なのです。

家庭が子どもにとって「安心できる場所」であれば、自然と学びへの意欲も育ちます。親子が笑顔でいられることが、家庭教育の最大の成果です。宿題をめぐる親子バトルに疲れているなら、少し肩の力を抜いてみませんか?

宿題や勉強をめぐる“親子バトル”を減らすために、以下の記事も参考にしてみてください。

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